
プロジェクトレポート
目指すは陶器と金属の二刀流
【 泉流山 】
2022年06月16日
今回は有限会社泉流山(山口県)の吉賀さんに、インタビューを行いました。
安土桃山時代から脈々と続く伝統ある萩焼(はぎやき)と現代にマッチした萩焼づくりについて、お話いただきました。
萩焼とは、どういった陶器なのでしょうか。
萩焼の歴史は、今から400年前の安土桃山時代に毛利輝元が朝鮮出兵をした際、現地から陶工を連れ帰ってきたことに端を発します。
萩焼は、わびさびの精神を大事にしている陶器です。
主張の控えめな優しい色合いのものが多く、使い込むにつれ、色合いの変化を楽しむことができます。
創業から現在までの経緯を教えていただけますか?
創業は文政9年(1826年)です。
長州藩の主導で磁器づくりを進める動きがあったことがきっかけになります。
最初は小畑焼と呼ばれる磁器を作っていましたが、時代の流れとともに陶器づくりにシフトしました。
曾祖父の代から家族経営を始めて、現在は従業員7名(うち職人3名)の会社となっております。

泉流山さんが目指す萩焼づくりとはどういったものでしょうか?
弊社では電動ろくろを使わないなど、伝統を重んじた制作を続けておりますが、現代にマッチした萩焼づくりも進めていきたいです。
「シンカシリーズ」というシリーズを打ち出したいと考えていますが、釉薬(うわぐすり:陶器に塗る薬の一種)作りが難航しています。
これまで萩焼を作る際に苦労されたことを教えてください?
私は東京芸大を出て、金属造形の領域で個人活動を5年ほど経験し、32歳から家業に携わり始めました。
そのため、金属造形と陶器制作の違いに苦労してきました。
窯焼きは作っているうちにどんどん壊れていくし、火加減など自分でコントロール出来ない部分も多く、モノづくりの概念からそもそも違うんだと痛感しました。
しかし私は、金属造形を知っているからこそできるモノづくりもあると思っています。
従来の陶器作りに金属造形の考え方や技術を上手く取り入れることで独自の作品を作り上げるのが、私の一つの目標でもありますね。

販売方法はどうされていますか?
基本的には自社ショップでの店頭販売です。
他にはオンラインショップやふるさと納税にも出品してはいますが、課題点も多く、なかなか上手く運営しきれていないのが現状です。
発信に関してはInstagramを主に動かしていまして、日々の作業風景などを投稿していますね。
一方で、商社や卸売会社を通じた販売はほとんど行っていません。
私としては萩焼としてのブランドを大事にし、あまり安価では出したくないという想いがありますので、そういった条件面で合わないことがあるのが正直なところです。
販売において、心がけていることはありますか?
先程もお話したように、安売りしないことはとても意識しています。
萩焼というブランドをしっかりと立てて、その価値を高めていくことで、結果として作り手や関係者も幸せになれるようにしたいと思っています。
どうしても直近の収益を考えると、最近は特に安価で質の高い商品が多いので値段を下げて販売しなければと思ってしまいがちですが、それは行わずにむしろ価値を高めていくことを目指したいと思っています。
普段はどういった方がご購入されますか?
やはり30〜50代の女性の方が多いですね。地域の方もそうですが、観光で来られた方にも良くご購入いただいています。
今後は、やはり長い年月使っていただけるような、より若い方々にも手に取っていただくための取り組みを強めていきたいと考えています。
ですが、実際のところはどのようにすれば良いのかもなかなか分からないところではありますが…試行錯誤していきます。
伝統工芸や萩焼について感じていることを教えてください。
少し繰り返しになってしまいますが、萩焼のブランド価値を高め、認知・浸透させていかねばなりません。
関係者が一丸となり、確固とした取り組みをしていく必要があると思っています。
現在私は、いくつかの萩焼作家さんの商品を集めたオンラインショップなども運営しているのですが、萩焼はどちらかと言えば「アーティスト」のようなタイプの作家さんも多く、非常に素晴らしい作品を作られる一方で、それをビジネスとして展開していくのが苦手な方が多いかもしれません。

今後について、どういったビジョンを持っていますか?
やはり私個人としては、経営者というよりも作り手としての楽しみを感じる性格で、モノづくりの現場に関わっていきたいと思っています。
改めて製陶活動に本格的に注力できるようになれば、先程お話していた、金属加工と陶器作りの両者の良さを活かした、二刀流のモノづくりに挑戦していきたいと考えています。
またいずれは、日本ブランドが拡大している海外にも展開し、世界の人に日本の萩焼という文化を、ひとつの日本ブランドとして広めていきたいと考えています。
日本ブランドが世界でより評価されていく未来はわくわくしますよね!!
吉賀さん、本日は素敵なお話をありがとうございました。