2022年09月26日 更新
【ETHNI9プロジェクト特集!】九谷焼の生地づくりを表現者としてこれからも 東製陶所
有限会社東製陶所

石川県の伝統工芸「九谷焼」からアジア料理にぴったりの食器をお届けする「ETHNI9」プロジェクト。本特集では、当プロジェクトの狙いや込められた想い、そしてプロジェクトに参画し、新たな九谷焼の可能性を探る作り手の皆さまに迫ってまいります!
第2回は、石川県九谷窯元工業協同組合の理事長であり、東製陶所の代表を務められている東繁治さんに、ろくろで丁寧に器づくりをされる手仕事とこれからのビジョンについてお伺いしてきました。
東さん、本日はよろしくお願いします。
まず初めに、貴社の作られているもの、また窯元の経歴や東さんが代表になられるまでのお話をお伺いできますでしょうか。
(東さん)
よろしくお願いします。
弊社は、九谷焼窯元として絵付け前の白地の器を作っています。
窯自体は100年以上前から続いており、私で5代目になります。
従業員は身内が多く、従兄弟とその家族など私を含めて5人で回している小さな窯になります。
代表になったのは、私が35歳の時に父が他界し、その時に引き継ぎましたので比較的早めの就任でした。元々、学生時代は美術系を専攻していましたが、その時は器作りというよりデザイン系の分野を学んでいました。ですが、大学時代の彼女が工芸専攻だったことがきっかけで、その分野にも関心を持つようになりました(笑)
大学卒業後は父に相談して京都に行き、試験場で2年間勉強しました。
試験場では釉薬が専門で、そのほかにも広く学ばせてもらいました。
そこで本格的にうつわ作りに関心を持つようになり、実家に戻りました。帰ってから1年間、やはり九谷焼を作るからには絵付けも学びたくて、陶芸の学校にも通いました。
大学時代から跡を継ぐということを意識はされていたんですか?
意識が全くなかった訳ではないですが、父から直接後を継ぐよう言われたことはありませんでした。
大学でデザインを学んでいたので、デザイナーとしての道も考えたことも当時はありました。工芸作品を見ていく中で、今は古臭いものだけではないんだということを知ったことが、この道に進んだきっかけですね。
代表になってご自身の中で変わられたことはありましたか?
私が代表になった当時、弊社で祖父の代から働いて下さっていた80歳近くの方がいらっしゃいました。その方から、私がそれまで聞いてこなかった東製陶所の歴史をお仕事終わりに聞いたことで意識が変わりましたね。
素敵なエピソードですね。
現在はどういった業務などをされていますか?
東製陶所はろくろで器の成形をするのですが、整形された後のものを振り分けして、窯で焼成することが日々の業務となっています。
また、外部の九谷焼の作家さんや卸問屋さんとのやりとりも代表として私が担っています。
今はろくろ形成をしておりますが、私の父の代では型で成形をすることで生産量を意識して生産していました。
しかし、その方針では私たちより大きい窯元さんには敵わないので、段々と今のようなろくろ成形に力を入れるようになりました。やはり年々とろくろ成形ができる職人さんが減ってきていることは課題ですね。
職人さんが少なくなってきているんですね。
工程の中でも序盤に携わる職人さんは、素晴らしい技術をお持ちの方でも世に名前が出にくいことが原因の一つですかね。
その結果、現在絵付けを中心に若い方は増えています。
東製陶所さんではどういった商品を作られているか、またものづくりで大切にされていることを教えてください。

器が商品としては最も多いです。
中でも白いうつわが多いのは、卸問屋さんや作家さんがその後、絵付けをされる素地として使用していただくためです。
お客様からご注文のイメージを図面で頂いて、立体になった時を想像して、ご注文いただいたイメージと相違が出そうな場合はこちらからもご提案させて頂くようにしています。
作品をお客様と一緒にうつわを作っていくような感覚を大切にしています。
お客様視点は今も昔も変わらず大事なことですよね。そのような中で、今回ETHNI9に関わることになったきっかけを教えて下さい。
小松市は中華料理屋さんが多いと聞き、ETHNI9にあるような新しいデザインの中華の器を作ってみようと思うようになりました。
そこから、今後も窯元同士でお仕事ができる機会が有れば参入していきたいと思っています。
東さんが感じられる今後の窯元の課題、九谷焼業界の課題があれば教えてください。
窯元としては生産スピードを上げていきたいですよね。
窯の大きさが大きいので、一杯にしてから焼成するとなると、時間がどうしてもかかってしまいます。
また、コロナウイルスの流行で東製陶所に所属する作家さんの個展なども中止になったりしました。
現在は徐々に回復してきましたが、今度は燃料や原材料の価格の高騰も課題となっており、値上げも検討しなくてはと考えています。
また窯元の後継者については、私も父と同じように、私の息子には継いでもらいたいというようなことは言っていません。ただ、息子には私の仕事をしている背中を見て、「物作りって面白い」と感じてもらえればと思っています。
九谷焼業界の課題としては、窯元同士で一緒に作業をする機会がないので、もっとコミュニケーションを取れればと思っています。
ETHNI9のプロジェクトでそういった機会も増えてきたので、今後も窯元同士で協力し合い、九谷焼の新しいひとつのジャンルを作っていければと思っております。
今後の中・長期的なビジョンについて教えてください。
今回のETHNI9のようなプロジェクトは、大変ですが面白く、やり甲斐を感じています。
今後もこういった取り組みには積極的に参加していくことで、九谷焼の生地の作り手として、伝統工芸の一つの分野を確立していければと思っています。
最後に東さんにとっての九谷焼について教えてください。
自分にとっては昔から傍にあった、もはや生活の一部です。
自身も九谷焼を作る表現者としての意識を持ち、今後も制作活動を続けていければと思っています。
素敵なお話をありがとうございました!